国際物流業界の「今」と「これから」

グローバル市場で高まる国際物流の重要性

グローバルサプライチェーンの分業化が進む中、製品は複数の国を経て組み立てられ、世界中へ出荷される時代となりました。特に、越境EC市場の成長は従来のBtoB輸送に加え、小口・短納期の物流ニーズを急増させています。

その一方で、以下のような不安定要素も顕在化しています。

• 地政学的リスク（例：ロシア・ウクライナ戦争、紅海の航行制限）
  
• パンデミックの影響による物流停滞の再発懸念
  
• 輸送コストの高止まりと人手不足

国際物流業界は「リスク分散型の国際物流体制」の構築を迫られているのです。

技術革新と環境対応が業界構造を再編する

次世代国際物流を支えるのが、テクノロジーとESG（環境・社会・ガバナンス）対応です。

◆ 注目の技術動向

技術	具体的な活用事例	期待される効果
ドローン	離島や山間部での最終配送（ラストワンマイル）	配送時間短縮・人件費削減
自動運転車	長距離輸送の幹線部分に導入	ドライバー不足への対処
AI	需要予測・積載率最適化・在庫可視化	コストと精度の向上
ブロックチェーン	サプライチェーン全体のトレーサビリティ管理	情報の透明性・信頼性向上

◆ 環境対応の強化

ヨーロッパを中心に広がる炭素税制度（例：EUの炭素国境調整メカニズム（CBAM））は、日本の物流業界にも影響を与えています。将来は「環境配慮型物流でなければ取引できない」ことが常態化することが予測されています。

• 電動トラックの導入
• 再生可能エネルギーを利用した倉庫運営
• LNG（液化天然ガス）やアンモニア燃料の採用

成長が期待される地域と市場ニーズ

物流拠点の再編に伴い、成長性の高い地域への注目も集まっています。

地域	成長背景	主な物流ニーズ
ASEAN諸国	製造拠点の中国依存脱却、若年層の人口増加	越境EC・冷蔵物流・都市内配送
インド	中間所得層の拡大・EC市場の拡張	小口配送・在庫最適化
中東・アフリカ	インフラ整備の進展と資源輸出による経済成長	輸出支援・多国籍連携

「どの国へ、どう運ぶか？」の設計力が、企業の成長戦略と直結する時代です。

就活に活きる！国際物流の基礎知識と企業が求める視点

国際物流の基本構造とプロセス理解

国際物流は単なる「運ぶ仕事」ではなく、調達・通関・在庫・情報の総合マネジメントです。各工程で発生するリスクとコストを把握し、最適化する力が問われます。

主な工程と役割

工程	内容	ポイント
輸送手段の選定	船・航空・鉄道・トラックを選定	コストとリードタイムの両立が鍵
通関手続き	書類の準備・関税支払い	法令遵守・スピードが重要
倉庫・在庫管理	入出庫管理、在庫精度の維持	WMS（倉庫管理システム）の活用
配送・納品	最終拠点から顧客への配送	ラストワンマイルの競争力

この一連の流れが「SCM（サプライチェーン・マネジメント）」の根幹です。

就職活動において求められる力

グローバルな物流業務に携わるには、「現場と経営の橋渡しができる人材」が重宝されます。

企業が評価するスキル

スキル	活用場面	具体例
英語・多言語力	通関書類作成、海外顧客対応	インボイス、HSコードの理解
コミュニケーション	現地スタッフ・顧客との連携	多国籍チームの橋渡し役
データ分析力	輸送効率や在庫状況の数値管理	Power BIやExcel活用
柔軟性・対応力	トラブルや規制変更への即時対応	BCP（事業継続計画）の理解

志望動機で盛り込むと効果的な観点

• 「物流＝戦略資源」としての理解
• サステナブルな取り組みへの関心
• 最新テクノロジーと現場の融合視点

自分の経験（異文化理解、データ分析、語学など）と物流業界のニーズを「接点として語ること」がカギとなるでしょう。

まとめ

国際物流業界は、グローバルな分業体制と越境ECの急成長を背景に、ますますその重要性を高めています。地政学リスクや輸送コストの高止まりといった不確実性に対し、企業は柔軟で多層的なサプライチェーン構築を迫られています。加えて、ドローン・自動運転・AIなどの技術革新が業界構造を再編し、環境規制（CBAMなど）への対応が競争力の鍵となる時代です。物流の現場では、国際的な視野と問題解決力を持つ人材が求められており、語学力やデータ分析力、サステナビリティへの関心も大きな武器になります。今後、物流を単なる輸送手段ではなく、企業の成長戦略を支える「戦略資源」として捉える視点が、就職活動においても強みとなるでしょう。